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 【劇団偉人舞台 第19回公演】
我孫子令

南部 孝司、吉村 啓史、鈴木 英行、我孫子 泉、小坂 建二、鹿島 良太、我孫子 令
池袋シアターグリーン
BASE THEATER公演 11/01〜05
2006/11/02

昭和41年6月30日。世界が熱狂したビートルズの来日コンサート初日に事件は起こった。
とある会社のワンマン社長が自宅からごく短時間の間に誘拐されてしまう。誘拐犯は「一億円」という途方もない金額を要求するが、唯一残された一人息子はその要求を拒否した。
息子の心の中にあるとある思い、社長を支える秘書の思い、そして社長のそれまでの思い。それぞれの思いが交錯する。
犯人はなぜ社長を誘拐したのか? なぜ息子は身代金の要求を拒否するのか?

客席の中央・四面から観られるように設置された舞台。通常のステージのように随時正面になる部分が決っていない分、観る人の位置によって役者同士の空間や、表情を楽しむことができて興味深い作りだった。背を向けている役者のセリフが聞こえづらい事もなく、十分楽しめた。セットは大きめの箱が2つと、小さめの箱が5コ位の最小限のもの。公演中もキーポイントになる黒電話や脅迫状などの限られた小道具がちらほら出る位だったから、逆にその小道具の印象が強く残った。
会社社長の誘拐事件。身代金は昭和41年当時の「一億円」。所々で流れるビートルズの楽曲。
誘拐実行犯はピストルを持っていたり、片割れのチンピラちっくな兄ちゃんは人質を傷つけるような暴走を見せたり、切り落とされた指を血でそまった布に包んで送りつけてみたりと、かなりリアリティー豊か。
ボスが誰であるのか謎であったゆえに推測する楽しみもあり、淡々と分析的に観てしまったけれど、中盤を過ぎた頃にストリーが急転し、舞台から目が離せなくなってしまった。「社長誘拐依頼人」が明確になり、「どうして誘拐を依頼したのか」という事も分った瞬間だった。恩情を拝した忠実な思いから、気持ちが離散してしまった家族が1つになるように、相手を信頼する心が戻ってくるようにと願い、誰にも言わずに墓まで持っていけるならば引き受けると言われ、一人胸の内に秘め生きていく事を選んだ一人の男の決心に触れたのよーっっっ それまでの分析的視点ではなく、心情的視点におもいきりシフトしましたね。ホント。
" お金じゃ買えない価値がある " とは良く言うけれど、「人が人を思う心」が巻き起こした事件で、予想外のエンディング。誘拐犯も刑事も・・・!!! みたいな(笑) エンディングに向かうまではアジトである工場が爆発炎上して死体が発見されて、、、とニュースまで流れたから、依頼人の心の中では「彼らの犠牲の上に今がある」とずと思って生き続けるんだなぁ〜と、ちょっと切ない気持ちは残ってしまいましたが、本当は誰も傷付く事なくハッピーエンドだったのです♪ ホント、裏の裏の裏まで読まないと、エンディングの予想が出来なくって観終わって「ヤラレた〜!!!」と、心の中で笑顔で叫んじゃった(笑)

脚本が生かせるのは役者さん次第だと常々思っているのがワタシの観劇スタイルであり、スタンスなものだから、感想書くと脚本中心になっちゃいますが(笑)、舞台上で動く彼らの本業の姿を観た気がします。板の上での「役」。その役者さんの「役」の気持ちに共感できる自分(私)。各々が「役」をモノにしていらっしゃって、皆カッコ良かった。今までのイメージがまるっきり変わって、見直してしまう方もいらっしゃいました。
私がずっと観たかったのは、鹿島良太さん。社長を誘拐する実行犯役で、頭が切れて、冷静でいて人情派、なのに冷酷さも持ち合わせているといった役所だったかな。
やっぱり、この方は上手いんですよ。空気・空間・対話・存在。その作り方はなんて表現したら良いんだろう。ただ「凄い」とか「素敵」とか、そんな簡単な形容詞で表現してはいけない程の良さを持っていらっしゃる。う〜ん、「役」としての「セリフ」を与えられて板の上で喋るのが役者さんだと思うんだけど、鹿島さんが喋っているのは「セリフ」ではなくて、自分の中に降りてきた役が喋っている「生の言葉」という風にワタシは感じている。とても熱い男の人です(^ ^)
そして私をストーリーにぐいっと引きづり込んだのは、脚本/演出も手掛けた秘書役の我孫子令さん。彼は私が今まで持っていたイメージを、180度がらっと覆して行き、次回公演がかなり気になる・・・そんな存在になりました。
次回も行くぞー!!(笑)



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