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<フライヤー表紙>

伝統の現在NEXT公演

加納幸和(花組芝居)

茂山逸平(大蔵流狂言)、 味方 玄(観世流能) 、石田幸雄(和泉流狂言) 他
.2005/12/21〜24
[紀伊國屋ホール] 2005/12/24

貧しい漁師は海神の公子と契約を結ぶ。浦一番の美女である自分の娘を差し出す代わりに、海の幸を身代として貰うというものだ。娘は「自分1人の命で親が助かるのなら」と大津波に呑み込まれ、海の彼方に消えた。・・・漁師は娘を差し出した代わりに得た身代を売り、村一番裕福になったのだ。
はるか遠くの深海。海底に嫁ぐ美女と、美に殉じる海神の公子との、人と人ならぬものの、不思議な愛の物語。

初めて、狂言や能演者の、生の舞台を拝見してきた。
今迄、私の中での狂言の知識は「小学校の時に国語の教科書で勉強した"附子(ぶす)"」、ウンナンで一時期やっていた「芸能狂言部」、ワイドショウを賑わせたご存じ和泉元彌氏の「和泉流」程度なモノであった。さらに、能については「歴史で習った世阿弥・観阿弥」と、「能面」と、子供の頃に3チャンネルで放送されていたモノをちらっと見て「・・・意味ワカラン」と思った事がある程度。いわゆる「知識はゼロ」であったのだが、演目である『海神別荘』がとても好きなストーリーであり、「現代劇」の役者さん達も一緒に作品を構築しているとのことだったので、思い切って観劇してみたのだ。
そんな程度の知識だったものだから、フライヤー等に書かれていた「夢幻能形式」からしてどんなモノなのか判らずに、ネットで検索して調べあげる始末(笑) ※ちなみに「夢幻能形式」とは夢と現実が混ざりあう幻想的な物
そんな状態だったものの、人が演じるその間・動き、衣装、照明、音楽、空間は、どんなジャンルのものであっても、演者の真剣勝負であることに代わりはない。肌で感じる、悲しみ・喜び・面白さは感じて来れたと思っている。
出演者、ただ1人口語体の現代劇語りをしたのは海神の公子(茂山逸平氏)。衣装は袴姿であったが、髪全体にはラメがさしてある。その他、僧都・女房(石田幸雄氏)・侍女等は狂言で、衣装は狂言らしく肩衣(かたぎぬ)に狂言袴で、面はなし。美女(味方 玄氏)は能で、小面(こおもて)を付け、巴(ともえ)を着ていたと思う。
公子が現代語でフツーに語っていたので、ストーリーの進みが分かりやすく助かりました(汗)
侍女役の4人は黒潮騎士にもなるのだけれど、衣装はそのままなので動き・表情で役や凛々しさを表す。侍女役の際には扇子を上手く使い、「狂言」のコミカルで滑稽な動きや表情を作り笑いをうみ、扇子を繋げて海蛇のうねりや魚群が右に左に方向転換する様はまさに伝統芸能。あっぱれ。
美女のセリフは口語体であったけれど、語りはあの独特な能のモノだったので言葉を拾うのがとても難しく・・・(汗) 頭で考えて凄いとは思うんだけど、瞬時に感じる部分を持ち合わせていない為に、理解するのが難しかった〜っっ

もっとも印象に残っているのは、やはり最後のシーン。美女と公子が心通わせ、それぞれがそれぞれの血を交わし飲む。この2人が扇子を片手に静かに舞踊を舞い、ステージ中央にその扇子を重ね置く。2人はこの扇子を残して舞台袖にはけていくが、この扇子はずっと、その場に鎮座している。
まるで、美女と公子が扇子になって、終生を誓ってずっと一緒にいるかのような姿に、ぞくっとした。

能や狂言のニュアンスも入りつつ、現代演劇の要素が違和感なく取り入れられていいたように思う。それぞれが、それぞれを喰う事も、喰われる事もなく、素人でも見やすいバランスでストーリーは展開していったし。
そんな、無勉強・無知識の私がこの「伝統の現在NEXT」を観るのにはハードルが高過ぎたというか、、、今こうして感想を書きつつ、色々な能・狂言のサイトで、衣装や面、仕種の事を見て「あーーーーーー!! だからこの衣装を付けていたのか!!」とか、「女性が泣いている仕種はこれかぁ〜、、、あのシーンでも同じ事してた!! これかぁぁぁぁ!!」とか、先に知ってたらもっと楽しめただろう事がたくさん出てきてしまいました(汗)
狂言や能を勉強して、ある程度理解した上でまた改めて観に行きたいものです。

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この「伝統の現在NEXT」はその前身的存在の「伝統の現在」・「伝統の現在'(ダッシュ)」がある。
「伝統の現在」は、『日本の伝統芸能である狂言と現代演劇を結び付け、幅広い人に鑑賞してもらおう』という事からスタートしたモノであり、演者は京都の大蔵流・茂山家と東京の和泉流・野村家の異流競演。
次ぎの「伝統の現在'(ダッシュ)」は狂言会の大立て者にして人間国宝でおられる茂山千作氏のお孫さん、茂山正邦氏・茂山宗彦氏・茂山逸平氏の3人である。
そしてさらにその次ぎに「伝統の現在NEXT」となるのだが、こちらの1作目は原作:泉鏡花・演出:加納幸和氏(花組芝居)の『高野聖』、2作目が今回の原作:泉鏡花・演出:加納幸和氏(花組芝居)で『海神別荘』。原作・演出は同じ方であるが、演者については毎作品ごとに違う方々で構成されている。




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