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<フライヤー表紙>

  【PARCOプロデュース公演
福島三郎 
ケラリーノ・サンドロヴィッチ

堺 雅人、橋本じゅん、八嶋智人、山内圭哉、橋本さとし、猪岐英人、水野顕子
東京公演 8/11〜9/3、大阪公演 9/7〜10
福岡公演 9/15〜16、名古屋公演 9/21〜22
[PARCO劇場] 2006/08/13・20

今から12年前、この演芸場のボイラー室で事故があった。平成の初頭に頭角を現し始めた若手の漫才コンビ「パンストキッチン」略して「パンキチ」の、ボケ役で台本を書いているアキラ(橋本さとし)が犠牲になったのだ。アキラは単身ドラマ出演やモデルの仕事もスタートした頃で、水面下ではモッシャンとコンビを解消しようと考えていた。そんなアキラをひがみつつも、その才能を認めていたモッシャン(橋本じゅん)はその後独り残され、酒浸りの日々を過ごしていた。
事故が起きたこの日は、毎年欠かさずにボイラー点検を行う事になっている。点検日もステージを休む事なく、今も変わらず芸人が舞台に出て客を笑わせ、裏手では芸人の素顔が顔を覗かせる。
最近売れ始めたピン芸人のボンちゃん(山内圭哉)、事故当時は若手で今は中堅の「骨なしポテト」・トシ&アヤメ(猪岐英人、水野顕子)、若き劇場支配人で元パンキチマネージャー鈴木光明(堺雅人)。そしてボイラー点検にやってきたボイラー技師・加藤信夫(八嶋智人)。
過去に死んだ一人の男と、現在の5人の男。そして唯一の1人の女。それぞれの腹に潜む思惑、現在と過去が交錯する空間。12年前のあの日の真実に迫る。

何かの芝居を観に行った時に、このフライヤーが入っていた。
出演の5人、演出のケラさん。こんなスペシャルな人達が作る芝居を見ないのは勿体ない。しかも初めて生で山内さんの芝居が見れるとあって、頑張ってチケットとりました(笑)
たくさんの芝居を観て来た中で、5本の指に入る作品でして、、、、いやぁ〜、ホントにあのエンディングには背筋が "ぞくぅ〜っっ" としました。恐いとかそういうのではなく「世の中にこんなオチ考えられる人がいるのか!!」という快感の "ぞくぅ〜っっ" です。
ストーリーは笑い・欲・エグ味が満遍なくちりばめられていて、笑いはかなりコテコテだから客席はどっと沸く。クスクスという笑いよりも、瞬間的にどっと(笑)
1つの舞台の上で現在と過去が絶妙に交差していき、それぞれの人間関係がちょっとづつ明確になっていく。登場人物の7人全員が複雑に絡み合っていたんだから凄い話し。もちろんその絡みはどろっどろな人間関係で、人の欲・エゴが剥き出し。剥き出しっていう言葉も甘っちょろいなぁ、、、理性という名のセーブが全くもって効いてなくってヤバイって方が合ってるかも。
ストーリーが大いに盛り上がってきて、エンディングに迎うウチにソレ迄のお話を振り返ってちょっと先読みしてしまう事ってあると思うんですが、全く予想外のエンディングがやって来た。しかも、それ自体ある程度の情報しか客席に与えていない。ズバリという答えじゃないから、舞台が静かに暗転して行く中で「何だ? 何ナンだ?? え?? アレはホント何???」と頭ン中がぐるぐる回ってしまった。今でも自分の中で確定的なズバリが見つからない。この見つからないズバリが溜らなく魅力的なんだよね〜。溜らなく魅力的だったので、追加公演も含めて2回観てしまった。休憩無しの2時間30分が本当にアッと言う間だった。
こうして思い返していても、絶賛する事しか浮かばない。
役者それぞれのキャラ設定もイメージ通りだし、逆にそれぞれが自分のイメージというのをしっかり分っているからアレ程役としてのキャラを引き出す事ができたんだろうなぁ〜とすら思う。
個人的にはボンちゃんの山内さんを観に行ったはずが、ワタシの心をがっちりキャッチしたのはモッシャンの橋本じゅんさんだった。
当時から現在迄の間で、時間の経過を強く感じさせる役がモッシャン。外見も中味も激動の人だけれど、その時間の経過を難無くコワイ程感じさせていたのがじゅんさんだった。舞台の空気も、間も、役としてのキャラも、そのキャラから生まれる戦慄も、ドレを取っても上手いの。
パンキチが舞台裏で漫才のネタ合わせをするシーンがあって、その間中は「今日は漫才を観にきたんだ」と思っちゃう位で、「芝居を観ている」という感覚をすっかり忘れてしまう程、すっごい面白かった。しかもネタがかなり本格的だし、ボケとツッコミが激しい激しい。特にモッシャンのツッコミは観て気持ち良い程で、本物の漫才師のようだった。この漫才をずっと観てたかったなぁ〜。※確か、ネタは中川家提供だったように思う。
その他役者陣はテレビやその他お芝居でその役者としての凄さっていうのは知っていたけれど、今回お初にお目にかかった「骨なしポテト」のトシ&アヤメ(猪岐英人、水野顕子)の2人も良かったよなぁ。特にアヤメ(水野顕子)。アキラ(橋本さとし)ともボンちゃんとも絡む、ポイント的役所だったけれど、アヤメは誰よりも芸人としてのプライドが一番高い人でした。このプライドの高さから色々としでかしているんだけどね。アヤメというネーミングって、案外「殺め」から来たのかもと思わずにはいられません。

脚本を提供した福島さんは、今回の公演パンフの中で『演出のケラさんが、この脚本をどの位料理してくれるのか楽しみだ』とコメントされていた。
そしてその本を手にしたケラさんは『自分が今迄接して来た本物の芸人さん達の舞台上・舞台裏を表現できたら』と、この脚本に見て来た事をどんどんと織込んでいったという。
この一癖も二癖もある役者達と一緒になって作品を作り上げていったそうだが、まさにその通りに仕上がっていた。より面白く、よりリアルにと。更に、当初の脚本では男5人だけで繰り広げられる所に骨なしポテトの2人を加える事で男女にまつわる欲が追加され、休館日の劇場ではなく公演中の劇場にする事によって日常と非日常のギャップ・対比・綱渡り的な恐怖を駆り立てた。
あぁ〜・・・。ホント、凄い人って世の中にはたくさんいるんだねぇ。



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