今回再演になるこの作品。
KAKUTAと出会いでもあったのが初演の『甘い丘』だったので、個人的には色々と感慨深いものがありました。
舞台は町外れの丘の上にある、サンダル工場。
いつも溶けた、甘いゴムの臭いが鼻につき、慣れなければ具合が悪くなってしまう。
ココに集まって働いている人々は、皆、訳アリ。
訳アリではなければ、こんな所で働かないという場所。
「孤独で枯れた女の巣」と町の人々は呼び、寄り付かない、そんな場所。
セットは初演時と配置が逆でしたが、その趣はどことなく懐かしく、どことなく古めかしい工場の寮の広い広い玄関ロビー。
ロビーには来客用テーブルと、その地続きでビールケースの上に畳を敷いてちゃぶ台とテレビが置いてある居間。
小さい流し、小さい冷蔵庫。
主人公は、旦那が外で女を作って出ていかれてしまった、箱入りと言ってもいい様な主婦。
町のニュータウン(比較的高級住宅地らしい)に住み、旦那の両親と同居を続けるも居場所が無くて・・・。
旦那の同情を買いたくて、旦那にあてつけで、ホステスをやってみても全然向いていなくって。
そんな時にこの工場で働く女に、冗談で工場を紹介され、本人は真に受けてこのサンダル工場にやってきた。
先に勤めている女性陣のパワーは凄まじく・・・。
子持ちでもその生き様から「パパ」と呼ばれる女性、旦那がいても人生が詰まらなくて働きに来ている女性、ずっと引きこもりだったけれどDV彼氏が出来てから対外的になった女性、今回一緒に面接に来た前科持ちの女性、この工場長である女性と、その妹の元ヤンの女性。
そして女性はあと一人、工場で働いていない存在として、前科持ち女性の姉。
男性陣は、こんな女性陣に押され気味ではありますが(笑)無くてはならない、愛らしい存在ばかり。
工場事故で耳が不自由になりながらも個人的に靴作りをしている男性、異母兄弟でもとっっも仲良しな二人、引きこもり彼女のDV彼氏。そして、この工場で働いていない工場長の彼氏と、主人公に雇われている探偵の男性。
工場勤務の人々は感情むき出しというと言葉は良くないけれど、個々が自分を飾らない(気取らないというか・・・)姿がとっっっても魅力的で。
自分の正直な気持ちを包み隠さずそれこそ“歯に衣着せぬ物言い”をしたり、罵りあったり。
DVっぷりも物凄かったよなぁ~・・・・。とび蹴りしたり、殴ったりは当たり前だったもの。>迫力凄い
その対比として、冷静で言葉を選ぶ、工場勤務ではない人々の姿があって。
それぞれに対して 「麻痺する」 という単語がとっても似合っていたけれど、それぞれがそれぞれの場所で、必死に生きている姿に打たれてきました。
印象的なのは、劇の始めの方でパパが主人公に向かって言っていた言葉。
ニュアンス的に 「明らかに自分より低い位置にいる人を見て、自分はまだ大丈夫だって安心してる、そんな目をアンタはしてんだよ!!」 っていうのが、物凄くずばり言って退けたのにドキリとした。
主人公も工場勤務の人々の前で 「(ココで働く理由は)堕ちる所まで堕ちてやろうってぇぇぇぇ」 と泣き崩れてみたりしてて(笑)
ベクトルの向きは違えど、案外似たもの同士だったのかも。
男女の出逢いがあれば別れもあるこの作品。
主人公が今現在の自分の状況をやっと飲み込んで歩き出してゆくキッカケは、一人の女性として愛される事だった。
初演を観ているから、今度は泣かないぞ!!! なんて思っていましたが。
やっぱり泣いてしまって(笑)
なんか、、、、心震えるモノがある作品なのです。
あーーーーーーーーーーーっっっ
全然上手く語れないですが、初演パワー以上の迫力を感じました。
この作品だったら、再々演でも大歓迎!! DVDが欲しい位です。
今回終わってしまったけれど、また観たいなぁ~・・・。